本好きのつぶやき

読書に勤しむ大学生の日常

山にいると時間の経過が速くなる?【カルロ・ロヴェッリ著:時間は存在しないより】

2022年に読んだ本に関してもぼちぼち紹介していきたいと思う。(就活が思ったよりもひまなので)
本著はジャンルはがらっと変わるが物理学の観点から見た「時間」という概念の話である。

 

カルロ・ロヴェッリ著:時間は存在しない

所変われば時間も変わる

本書を読んでいてまず驚いたのが、時間経過の違いは日常のあらゆる場所で見られることだ。
例えば卓上の時計と床に置かれた時計を一定期間観測すると、同じ条件のはずなのに時間の刻みにずれが生じ、卓上の時計の進みが速くなる。この事象に関してずれが生じるのは時計だけでなく、あらゆることに当てはまるとのことだ。これは一体どういうことか。

この現象に乗っ取れば、山にいれば地表付近よりも時間経過が速くなることになる。物理学の観点からすると、物体が周囲の時間を減速させているという。ここで言及される物体は質量を持つ物質のことであり、この物体の質量が高ければ高いほど周囲の時間を減速させるのだ。

 

ブラックホールの原理と一緒

 

つまり地球の中心に行けば行くほど、地球の核(高質量)に近づくため地表や地下は時間の経過が遅くなっているということである。
この理論で面白いのが、りんごが地面に落ちる現象を時間経過が遅い方に移動しているとも捉えられる点である。(おそらく相対性理論をものすごく簡単に説明してくれているのだろうけど、)

つまり私たちは時間が減速するからこそ、足をきちんと地につけて歩くことができるとも言える。

 

wakara.co.jp

 

私は文系大学生なので数学が苦手だ。経済学部だから数式を扱うこともあるが基本的に後ずさりしてしまうので、そういった点で本書は読みやすい。ほとんど文章で相対性理論や重力について語られているため、数式が苦手な方にもおすすめだ。

 

熱と時間

過去には熱の法則性から時間を解明しようとした人もいたようだ。

www.chem-station.com

 

基本的に熱は熱いものから冷たいものにしか移らないという不可逆性を有している。この法則性を使い。過去と未来を区別するのだそうだ。
分解すると熱とは分子ミクロレベルの振動であり、人間の目には見えないが分子の運動は続いている。
氷が溶けるのは水の中の激しく動く分子が秩序立つ氷の中の分子とぶつかり動かすからである。(義務教育の最履修中)
この秩序が乱れ、無秩序になる動きを時間の経過と表せるのではないかというのがルドルフ・クラウジウスの主張である。

 

この論理は本書で否定されて終わってしまうのだが、面白い考え方だと思う。今と未来の違いがあるとすれば、それはあらゆる事象における細かな差異であり、それをさらに細かく分解することができれば「時間」そのものの存在すら曖昧になってしまうのではないか。
「秩序」の定義が難しいところではあるが、ルドルフ・クラウジウスが提示したエントロピーという概念(詳しくは本著を参照)によって物理学における新たな見方が確立したのは言うまでもない。著書の中身がだいぶ飛んでいたので読み返してみようと思う。