本好きのつぶやき

読書に勤しむ大学生の日常

アベノミクスってなんだったの【原真人著:日本「一発屋」論より】

私自身日本の首相のイメージは誰かと聞かれれば安倍晋三と答えるだろう。それくらい長い期間日本における政治のリーダーとして存在し、世界各国からの信頼も厚かったように思う。

大学で経済学を専攻しながらも安倍政権にて始められた「アベノミクス」について触れる機会はあまりなかった。初学者にとって難しい部分があるからかもしれないが、自国の政治やその政策について理解がないのは大問題である。なぜなら、民主主義において「何も発言しない・意思表示をしない」ことは従っていると同義であるからだ。
日本のこれからに対する不安感や危機感を煽る報道や雰囲気が先行しているが、そんな今だからこそ「アベノミクス」を振り返っていこうと思う。

参考図書は経済ライター原真人氏の日本「一発屋」論である。

 

原真人著:日本「一発屋」論

そもそも

アベノミクスとは、2012年12月26日に始まった第2次安倍政権において、安倍晋三首相(当時)が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策のことです。

最大目標を経済回復と位置づけ、
大胆な金融政策(デフレ脱却を目指し、2%のインフレ目標が達成できるまで無期限の量的緩和を行うこと)
機動的な財政出動東日本大震災からの復興、安全性向上や地域活性化再生医療の実用化支援などに充てるため、大規模な予算編成を行うこと)
民間投資を喚起する成長戦略(成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い、投資を誘引すること)という3本の矢によって、日本経済を立て直そうという計画です。

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/a/J0594.html

 

アベノミクスは「3本の矢」というキャッチーな言葉とともに始まり、日本経済立て直しを目標に政策を実施していった。今回は特に①大胆な金融政策にフォーカスして述べていきたい。

リーマンショック以来、日本は(世界経済全体として)深刻なデフレに悩まされていた。ちなみにデフレとはモノの価値よりもお金の価値が上がってしまうことで、金融危機や経済成長の鈍化によって、人々がお金を使わなくなることで発生する現象だ。ちなみに2023年現在はインフレが進行して物価高が騒がれているが、この点は次の機会に述べていこうと思う。

 

どんな

元来続いてきたデフレを脱却するために政府が実施したのが、量的緩和政策である。簡単に述べるとお金を刷りまくることだ。市場に出回るお金が増えれば自然とお金の価値は下がり、モノの価値が上がる。こんな感じでインフレにしていこうよ政策だったのだ。ちなみに世界の主要各国でも同じことを行っていた。

文字面ではすごく合理的でいいじゃんという感じだ。
しかし問題点はある。お金を刷りまくり発行するわけだが、これはいわゆる国債にあたる。家計における借金の概念と異なる部分があるが、なるべくならない方が良いとされる。もしあまりに大量の国債を発行し、国債市場における信用が失墜すれば形は違えどジンバブエや戦後ドイツのようなハイパーインフレを引き起こす可能性は拭えない。

また、量的緩和に使われるお金は税収あるいは将来の税金を担保にした政府の借金と言うことができ、つまりは必ず将来世代に負担があるのだ。
このように多数の問題を孕んだ経済政策だったが、インフレ率と言う観点でその成果は長期的に見てほとんどなかった。市場にお金が出回りまくった(実際は日銀の当座預金に置きっぱなし)が、結果として消費は息を吹き返すことなく終わったのだ。

 

ついでに日銀元理事のインタビュー記事を読んだが、なかなかに衝撃的だった。
お時間があればぜひ一読してほしい。

webronza.asahi.com

 

総じて

つまりこの一連の金融緩和政策は、いわゆるヘリコプターマネーによる一時的なものだったと言える。また紙幣を刷りまくったことで、余った大量のお金はどこへ行ったかと言えば富裕層や投資家の懐である。株式市場には大量のお金が流れ込み、異常体温状態となってしまった。アベノミクスの結果円安株高が進行し、この点だけ見れば成功のようだ。しかし当初の目的は全く達成されず、持続的な日本経済の成長および、復活はなされなかった。これが著者の語る一発屋の所以である。

 

 
 

odasakukun.hatenablog.com