本好きのつぶやき

読書に勤しむ大学生の日常

倍速視聴を考える【稲田豊史著:映画を早送りで観る人たちより】

現役大学生大半の方々にはご共感いただけると思っているが、正直講義動画を倍速視聴することに一切の躊躇はない。むしろ速く見終えることができれば効率がいいし、もともとのスピードで視聴する必要があるか?といった感じの講義動画も多い。

 

しかし教授の目線に立つと、せっかく作った動画を倍速再生されてしまうのはなかなかに気の毒だ。
大学の講義は対面授業で実施してこそ質が担保されると思っているので、ぜひコロナ禍が収束してからはもとの形態で行っていただきたい。

 

さて今回は2022年読了本「映画を早送りで観る人たち」について語っていく。キーワードは倍速視聴である。

 

田豊史著:映画を早送りで観る人たち

 

倍速視聴する若者

本著においてまず問題提起されている対象が、「映画やドラマを倍速視聴する人々の存在」であり、先ほどの講義動画の話とは少々ベクトルが異なってくる。
ちなみに私は映画・ドラマなどの作品を倍速視聴することはなく、理由は作品だからである。基本的に著者と同じ視点で読み進めたが、所々倍速視聴に共感する部分もあった。

 

この現象にどんな要因が絡んでいるかと言えば、ずばり技術の進歩が大きい。最たるものがサブスクリプションである。
映画・ドラマサブスクのNetflixアマゾンプライムビデオが消費者にもたらしたものは、いくら時間があっても鑑賞しきれない作品の数々=無数の選択肢である。

 

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昔はレンタルビデオ店へ赴き、そこで見たい映画をチョイス、あとは決められた期間内で視聴する必要があった。それが今は画面1つにレンタルビデオ店がまるまる入っているような形で作品選び放題、お値段も毎月定額ロープライスという革新的サービスが誕生してしまった。

 

そんな作品が溢れかえっている時代において、「あの映画見た?」とか「今週のアニメすごかったよね?」などと友人に言われたらどうだろう。または自分の所属するコミュニティでその作品について盛り上がっていたら、自分も見なきゃと思ってしまうのではないだろうか。
特にコミュニティや友人関係に敏感な若者はその傾向が強いだろう。

 

odasakukun.hatenablog.com

 

観たいではなく知りたい

では「周りの人が観ているから」という理由で作品を倍速視聴した先にあるのはなんだろうか。
そこで得られるのはコミュニティの一員としていられる安心感や作品に対する共感であろう。多分ここで言及する作品に対する共感は、従来で言う感想や感覚の共有とは異なったものだ。

 

作品を観た人の感想に質とか優劣をつける気は毛頭ないが、作品の倍速視聴はあくまで「コミュニティ活動」という目的のために行う手段でしかない。そのため作品に対する興味関心や思い入れが必ずしも伴っている必要はなく、その分従来の鑑賞方法の結果とは異なったアウトプットがなされるのは明白だ。

作品の視聴方法は個人に委ねられているが、私は筆者と同じくこの傾向に警鐘を鳴らしていきたい。この行為は作品の鑑賞ではなく、単なる「コンテンツ消費」そのものだからである。

 

みんなが話している話題についていきたいから不要なところはとばす。
その映像描写や空白、間の取り方は本当に不要なところなのか?そのやり方に慣れてしまったら、当倍速で作品を鑑賞することはできるのか?こんな感じで疑問点は多く出てくるが、現代人なりの悩みも多く絡んでいるため一概に切り捨てることもできないところ。

次回の記事に続く。

 

 

 

odasakukun.hatenablog.com